コラム

湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉

2009年10月07日 14:28

私は温泉が好きである。地方に出かければ、必ずといっていいほど名湯に浸かる。

今年開催された、日本会計研究学会第68回大会(兵庫県神戸市・西宮市)への参加に先立って、神戸の中心・三宮から有馬温泉に向かった。一度は行ってみたい温泉だった。

何しろ江戸時代の寛政年間(1789-1800)にはじめて作られた温泉番付では西(西日本という意味)の大関(当時は横綱がないので、大関が最高位)に掲載されている。

ちなみに、東(東日本という意味)の大関は草津温泉である。江戸時代を通じてこの両温泉の大関の位置は不動であったというからすごい。両温泉に下呂温泉(岐阜県)を加えて、「日本三名泉」とよく言われる。これは、一般には徳川家康以下4代の将軍に仕えた儒学者・林羅山の有馬温泉で作った詩文集から採ったとされているが、実は原本があるようだ。室町時代の僧、万里集九がこれらを三名泉と書いていて、博学の羅山はこれを引用したらしい。

なお、清少納言も枕草子の中で「湯はななくり、有馬、玉造」と書き残していて(117段)、有馬温泉の由緒ある歴史的評価は絶大である。

さて、どうやって目的地に行くのか見当もつかないので、JR三宮の駅員に聞いてみたら「市営地下鉄で谷上駅に行かれて神戸電鉄三田方面へ乗り換え、有馬口駅で下車、有馬温泉温泉行に乗られるとよいですよ」とのことだった。

市営地下鉄の電車内に入ると、「痴漢はあかんで。絶対あかんで。」という中づり広告が眼に入った。(やはり、ここは関西なんだなぁ。土地変われば表現も変わるのだなぁ)と、思った。

三宮から30分くらいであったろうか。有馬温泉駅に着いた。とても小さな鄙びた駅で、下車すると坂道が温泉街へと続いていた。

湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-1湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-2
5分ほど坂道を上ると、右手に温泉宿、左手に河原が見えてきた。なかなか風情がある。上の写真は、それぞれ進行方向逆側から撮っている。
その河原の先に赤い欄干の橋が架かっていて、何やら着物姿の女性銅像があった。この橋が「ねね橋」、この女性があの関白豊臣秀吉の妻、「ねね」であることは片脇の説明文ではじめてわかった。
湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-3
「ねね橋」を左に見た三差路を右折すると、「太閤通り」というメインストリートで、観光総合案内所をはじめお土産品店、漬物屋さん、お菓子屋さん等が賑やか両側にならぶ。時代が、タイムスリップしたみたいな光景だ。
湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-4
太閤通りをしばらく進み大きな土産やさんの角を左折すると、坂道の傾斜が増し、道路幅が狭くなった。その先に、大通りとはまた異なる、なかなかレトロな雰囲気の建物が視界に入ってきた。
湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-5湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-6

観光案内所でもらった地図を見ると、「金の湯」と「銀の湯」があったので、さっそく探しはじめた。「金の湯」は道路幅の狭くなった坂道のすぐ左にあった。「金の湯」玄関近くには飲泉所もあり、ここは誰でも飲むことができる。
湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-7湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-8

「金の湯」に浸かってみた。地元の旅館協同組合は「金泉」「銀泉」という名称で登録商標をしている。つまり他の温泉では「金泉」「銀泉」の名称は使えないわけだ。「金泉」の泉質は、含鉄泉であり、塩分が多い。タオルに湯をかけるとすぐ茶褐色になってしまう。効能は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、となっていた。相当な幅広い効能だ。これだけの14効能であれば、何にでも効く、「魔法の湯」である。

温泉分析表を見たら、82.4℃となっていたので、湧出時の元湯は大変な高温だと思った。一応、有馬に来たので泉質はどんな味がするのか口に含んでみたが、とても鉄臭くて塩っぱく飲めるものではなく、すぐ吐き出してしまった。しかし、よくからだが温まった。汗かきのせいだろうか。絞りタオルで拭いても拭いても顔から頭から汗が噴き出す。この有馬はサイダーの発祥の地だそうで「ありまサイダー てっぽう水」と書かれた瓶を片手に飲みながら、汗を拭き吹き、友人等に絵葉書をしたためた。

「銀の湯」は、すぐ近くだと思いきや、しばらく坂道を上って到着した。
湯けむりの薫り(1) 名湯・有馬温泉-9

こちらは、無色透明。泉質は炭酸泉とラジウム泉の混合で、ごく普通に飲めた。泉温は、炭酸泉が18.6℃、ラジウム泉が29.4℃だと、分析表に書かれていた。
効能は、神経痛、皮膚病、関節痛、五十肩、うちみ、疲労回復、筋肉痛、冷え性、慢性消化器病となっている。これまた、ずいぶんと幅が広いものだ。

入浴料は「金の湯」が650円、「銀の湯」が550円であるが、両湯セット料金(2館券)だと850円で何と350円割安、これに太閤の湯殿館(太閤が浸かったというお風呂の歴史博物館)見学料金200円をセットにした3館券だと1,000円で400円も割安になる。何か、有馬温泉3館券を宣伝しているみたいになってしまったが、これはお薦めである。