コラム

第124回 日商簿記検定2級 第5問(工業簿記)の印象

2010年03月04日 10:20

第4問同様、あくまでも当アカデミーの塾生による受験報告を口話から聴き取った範囲での印象による解説なので、現段階では必ずしもその妥当性を保証するものではないことをあらかじめおことわりしておく。

[問題文]A社は、当期に製品Xを40,000個製造し、価格200円にてそのすべてを販売した。そして、全部原価計算により、下記の損益計算書を作成した。時期の利益計画のため、製品Xを原価分析した結果、製品1個について、変動費は直接材料費40円、直接労務費10円、製造間接費20円、販売費5円であることが判明した。なお、直接材料費と直接労務費はすべて変動費であり、製造間接費と販売費および一般管理費については、変動費以外は固定費である。また、期首と期末に仕掛品および製品の在庫はないものとする。

 問1 答案用紙の直接原価計算による当期の損益計算書を完成させなさい。

                  損益計算書(単位:円)
   売上高8,000,000
   売上原価4,000,000
   売上総利益4,000,000
   販売費および一般管理費2,400,000
   営業利益1,600,000
問2 当期の損益分岐点の売上高を計算しなさい。
問3 次期に、価格、固定費、製品1個当たり変動費ともその金額が当期と同一と仮定した場合、上記の営業利益を2倍にするために必要な売上高を計算しなさい。

 [印象と解説]
(これは第4問と比べるとずいぶん素直だなぁ・・・)
という印象を受けた。
 まず、「期首と期末に仕掛品および製品の在庫はないものとする。」という文言で全体のレベルを簡素化している。ただ、現代の若者たちには文章の読解力が相当不足しているので、見た瞬間に(これはむずかしい!)と頭が真っ白になりお手上げになった諸君も意外と多かったのでは、とも感じた。
 では、解説を試みよう。
まず問1。
この手の問題では、製品1個当たりの固定製造間接費がいくらになっているのか、を突き止めることが最大のポイントである。なぜなら、全部原価計算方式では製品原価に固定製造間接費を含めてしまうため、それが売上原価にも反映されてしまう。もし仮に、販売量が生産量よりも少なければ、その分、販売量に含まれる固定製造間接費(つまり売上原価に含まれる固定製造間接費)が少なく割り当てられることになる。これに対し直接原価計算方式では、販売量の多い少ないに関係なく、当期の生産量に対して固定製造間接費を割り当てるので、利益計画を作成する観点からはきわめて合理的な方式と言える。
 製品1個当たりの固定製造間接費は、与えられた損益計算書の売上原価から判明する。全部原価計算方式の売上原価が4,000,000円ということは、それを販売個数40,000で割れば、1個当たりの全部製品原価100円が明らかとなる。その内訳は、直接材料費40円、直接労務費10円、変動間接費20円(変動製造原価はその合計70円)がすでに問題文に明示されているので、残額は30円(100-40-10-20)で、これが製品1個当たりの固定製造間接費である。
あとは、解答用紙の損益計算書を要領よく仕上げる。その際、製品1単位当たりの販売または製造単価と、売価に対する比率を書き添えることを忘れないようにする。むろん、答案の提出時には単価、比率は消しておく。
 

直接原価計算による損益計算書   (単位:円) 
                                 単価 販売量・生産量 売価を1とした比率
売上高      @200× 40,000個  8,000,0001 
変動売上原価   70                    ×40,000個 2,800,000 0.35 
   変動製造マージン                       差引 5,200,0000.65 
変動販売費                             @5 ×40,000個200,000  0.025 
   貢献利益                                     差引                         5,000,000 0.625 
製造固定費      @30× 40,000個  1,200,000  
固定販売費・一般管理費   2,400,000-200,000  2,200,000  
                    
営業利益                 1,600,000  

           直接原価計算による損益計算書   (単位:円)

                      単価  販売量・生産量         売価を1とした比率

売上高         @200 × 40,000個     8,000,000           1
変動売上原価  @  70 × 40,000個     2,800,000                 0.35
   変動製造マージン         差引   5,200,000               0.65
変動販売費   @    5   × 40,000個         200,000                0.025
   貢献利益                                      差引          5,000,000                 0.625
製造固定費   @  30 × 40,000個     1,200,000
固定販売費・一般管理費
        2,400,000-200,000           2,200,000 
   営業利益                 1,600,000

問2  これは、上記の損益計算書と比率を応用すれば容易に解答できる。 

                                                                      比率
売上高              ④  5,440,000     1
変動売上原価         1,904,000     0.35
変動製造マージン  差引   3,536,000         0.65
変動販売費             136,000            0.025
貢献利益               差引    ③   3,400,000           0.625
製造固定費          ② 1,200,000
固定販売費・一般管理費    ②2,200,000 
営業利益       ①      0

①まず、損益分岐点では営業利益はゼロであるので、営業利益のところを0とする。
②次に、固定費は変わらないので、製造固定費、固定販売費・一般管理費はともに問1の数値を記入する。
③貢献利益から固定費を差し引いたものが営業利益だから、貢献利益は①と②を加えて3,400,000とする。
④貢献利益を売価で割った数値(貢献利益率)が0.625
(1-0.35-0.025)なので、逆に、貢献利益3,400,000円を 0.625で割ってやり、求められている売上高を計算すればよい。5,440,000円となる。
解答では求められていないが、上記には変動売上原価、変動製造マージン、変動販売費もそれぞれの比率を乗じて示してある。

問3 営業利益を2倍、つまり3,200,000円(1,600,000円×2)にするために必要な売上高も、結局は、上記の比率を加味して、損益計算書の形で求めるのが最も容易である。

売上高        ④  10,560,000     1
変動売上原価        3,696,000           0.35
変動製造マージン  差引  6,864,000         0.65
変動販売費            264,000           0.025
貢献利益 差引           ③      6,600,000           0.625
製造固定費       ② 1,200,000
固定販売費・一般管理費 ② 2,200,000 
営業利益        ①   3,200,000

解答への手順を示そう。
①営業利益のところに3,200,00を記入する。
②固定費は、上記と同じ数値をそれぞれ記入する。
③貢献利益は①と②の合計額
6,600,000(3,200,000+2,200,000+1,200,000)を記入する。
④最後に、貢献利益を貢献利益率0.625で割って必要な売上高を求めればよい。
10,560,000(6,600,000÷0.625=10,560,000)円となる。
なお、先ほどと同様、解答では求められていないが、上記には変動売上原価、変動製造マージン、変動販売費もそれぞれの比率を乗じて示してある。